痛み吟醸の美酒

IMG_7933.jpgハコネナラタマバチAndricus (Callirhytis) hakonensis の虫コブ。タマバチ類は幼虫期に植物の葉や茎内で暮らす。その際、自分を取り巻く植物の細胞を何らかの方法で異常に活性化させ、大きなコブ状にしてその内部で暮らす。ハコネナラタマバチは秋にコナラなどの枝に群がって虫コブを形成するが、その際に虫コブ表面から多量の蜜を分泌するため、アリが沢山集まる。

「アリとハチの自然史」(北海道大学図書刊行会)によれば、普通コナラの枝は蜜を出すことはないのに、このハチが虫コブ化すると枝内部の組織に分泌器官ができ、蜜が出るようになるという。無から有を作るような虫だ。ハチが何がしかの手段で植物の細胞を操作している結果らしい。
この蜜を目当てに、様々な種類のアリが寄ってくる。樹上で採餌する雑食アリなら種類を問わず集まるようで、行きつけの森ではアメイロアリとアミメアリ、ハリブトシリアゲアリが来ている。

ハチ・ハコネナラタマバチ2滴状に溜まった蜜は、人間が舐めても甘く感じる。蜜でアリを懐柔する栄養共生型の好蟻性昆虫はいくらでもいるが、それらは多くが自分の体内で蜜を作っている。そこへ来てこのタマバチの場合、自分でなく植物に蜜を無理矢理作らせているという点で、他の栄養共生型の好蟻性昆虫とは趣を異にする。

ハチ・ヤドカリタマバチ-(6)
タマバチの虫コブのそばに、怪しい虫影発見。寄生性の別種のタマバチ(恐らくヤドカリタマバチ亜科Synerginae sp.)である。この仲間はタマバチなのに自分で健康な植物体に1から虫コブを作る能力がなく、もっぱら他種のタマバチが既に虫コブ化した場所に間借りして虫コブを作るらしい。
警戒心がとても強く、撮影が難しい。アリの防御が薄くなったときに、ささっと標的に近寄っていく。

IMG_7935.jpgこの寄生蜂は、あくまでも自分の虫コブを作るのが目的であって、直接大家の虫コブの中身に悪さする意図はない。しかし、この寄生蜂の虫コブは大家のそれより成長スピードが異様に速く、ひとたび作られるとたちまち巨大化して周囲の大家の虫コブを押しつぶし、圧死させてしまうらしい。
でもハコネナラタマバチの虫コブ周辺にはアリが常にうろついているため、招かれざる客はなかなか近寄れない。こうした天敵に対する防衛効果を見越してハコネナラタマバチが蜜を作る(作らせる)ように進化したとは到底思えないが、いずれにしても不思議な現象である。

長野にて。

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