ジャングルダンスby荻野目洋子

IMG_5218.jpgシラミバエHippoboscidae sp.。恒温動物の体表に住み着き、吸血する奇怪なハエ。山道を歩いていたら、何か変な虫が首筋に飛んできてへばりつき、離れなかったので取り押さえたらこれだった。山ではシカに付くシカシラミバエ属Lipoptenaが服に飛んでくることはよくあるが、これはそれと違う比較的大型種。この大きな目の種類は、たぶん鳥に付く種類だと思う。
この仲間には獣に付く種類と鳥に付く種類とがいて、種毎に取り付く寄主動物の種も大まかに決まっている。俺は周囲の人間から、しばしば振る舞いが哺乳類より鳥類に近いことを指摘されるのだが、虫にまでそれを言われた気分。

IMG_5225.jpg上から見るとそれなりにハエの形だが、横から見ると紙のように扁平。これにより寄主の体毛の間を軽やかにすり抜けることができる。行動はかなり素早い。

IMG_5237.jpgするどいツメ。寄主が暴れても、容易に振り落とされない。毛の少ない人間の肌に止まったときさえなかなか離れないのだから、鳥獣の体表上ならなおさらだろう。

IMG_5242.jpg目のパッチリした可愛い顔。

シラミバエは変わった繁殖様式をもつ。メスは体内で孵した卵をそのまま体内でかくまい、蛹化直前の幼虫もしくは蛹の状態まで発育させてから産み出す。このため、一度に多量の子孫を産めない代わりに死亡率の高い若齢期の子孫を自身で守り通すことが出来るようになった。シラミバエ科の他、クモバエ科、コウモリバエ科、ツエツエバエ科がこの生態を持っており、これらをまとめて蛹生類と呼ぶ。
この4科は、見た目の姿があまりに違いすぎるため、昔の昆虫分類学の本には「偶然同じような繁殖生態をもった仲間であって、実際の類縁は遠い」と書いてある。しかし、今では実際に近縁な仲間同士であると見なされているようだ。

蛹生類のうち、アフリカにのみ生息するツエツエバエは、睡眠病という致死性の高い病気を媒介することで恐れられる吸血バエ。しかし、俺にとっては生きている間に一度は生きた姿を見てみたいと切望している生物の一つでもある。シラミバエの口をもっと長くし、胴体の厚みを普通のハエ程度に膨らませた感じの姿をしたハエらしい。偶然拾ったハエを自分の足首に乗せてニラニラ観察しながら、まだ見ぬアフリカに想いを馳せたりした。

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ソウだったのか!
前肢で頭を引っ掴んで盛んに捏ね繰りまわすハエに、
クモの様に這いつくばった肢が妙です、
薄い体の持ち主は油断大敵(チャバネゴキの彼奴ら)
昆虫はどうして此処迄、適応に特化出来たのか・・

「鳥人」ですかァ、ヤッパリ橋の下の「お拾い」子だった?
瓜豆|2012.09.16/22:31
ハエなのにハエらしからぬ姿、本当に感心してしまいます。しかし、何故人間の体に飛んできたのか・・
いっそ鳥になってしまいたいです。
richoo|2012.09.19/16:11

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