373.jpg鳥キンバエProtocalliphora or Trypocalliphora sp.。長野にて。

珍しい鳥類寄生バエの一種で、小鳥の巣から発生する。メスは巣やその周辺に産卵し、孵ったウジはひな鳥の体表に齧り付いて吸血する。まるまると飽血した終令幼虫はひな鳥から離れ、巣材の底で蛹になる。成虫のハエが羽化して巣からはい出すのは、ひな鳥が全員巣立ったころと思われる。
中でもヤドリトリキンバエT. braueriという種は、ウジがひな鳥の皮膚下に潜り込んで吸血するというおぞましい生態を持つ。しかし、ひな鳥にとってこれら蝿の寄生は、思いの外生命に別状ないらしい。むしろないように手加減しないと、ひな鳥に死なれてハエ自身が困るだろう。
Protocalliphoraで画像検索すると、ウジが鳥のひなに寄生している様子が確認できる。苦手な人は見ない方が良い。

372.jpg今年の春先に裏山で鳥の巣箱を仕掛け、シジュウカラに営巣させた。それが巣立ったあとで巣内を調べ、数個の蛹を得ることが出来た。写真の個体は、これから羽化させたもの。キンバエとはいっても煌びやかさはなく、ワカメのような深緑の体色。そして、日本の普通の大形クロバエ類と違って、左右の翅をハサミのように重ねてとまるようだ。
狭くて暗い所に入り込もうとする性質がやたら強い。そうかと思えば、突然這いだして飛んで逃げたりするため、動きが読めず撮影が難しい。立ち振る舞いが他の一般的なクロバエ類とはかなり異なり、見ていて不気味だった。これら異質な印象は、先人たる昔のハエ学者も感じていたらしい(内川 1966)。

374.jpg上の個体が羽化した蛹の殻。不思議なことに、鳥の中でも種類によってこの蝿のウジに対する反応が違うらしい。カラ類のヒナはウジに食われるがままにするのに、ニュウナイスズメのヒナはすぐに気付いてウジをむしり取り、逆に食ってしまうらしい。

鳥キンバエ類は日本に3-4種いて、おそらく生息地では珍しくはない。だが、鳥の巣に縛られた生活をしているうえに腐れものに集まりたがらないようで、普通の蝿をおびき寄せる方法では得難い。結果として、すべての種が採集記録の少ない珍種として扱われている。生きた姿が撮影されるのは、きわめて異例だと思う。

参考文献:
篠永哲, 嶌洪(2001)ハエ学―多様な生活と謎を探る。東海大学出版会、369pp.
内川公人 (1966) トリキンバエの宿主鳥類の記録。衛生動物 17, 168

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