369.jpgトビイロケアリLasius japonicusを攻撃する瞬間の、正体不明の好蟻性ノミバエ一種。カマ状の鋭い産卵管をむき出して、アリの腹節の継ぎ目を狙い襲いかかる。
今年の7月上旬に初めて国内で生息を確認したばかりの、まったくの未知の種。見つけたのは裏山。少なくとも、従来国内で知られていたケアリ属寄生のナマクビノミバエPseudacteon sp.とは完全に別種。国内の他の好蟻性ノミバエ類と比べても、似たものに見覚えがない。種どころか属レベルで、国内初記録の可能性が高いもの。

368.jpgノミバエの種同定には、オス個体の交尾器形態を精査することが絶対必須だが、日本の好蟻性ノミバエ類はその生態上、オスを野外で得るのが極めて難しい。だから、日本で知られている種のうちほとんどでまだ種名が判明していない。新種なのかどうかもわからない。しかし今回、この種に関しては奇跡的にオスを捕獲することに成功した。時間はかかるが、これで正体が調べられる。




裏山でたった今見つけた未知なる生き物の写真を、瞬時にして全世界に発信できるブログというのは、本当にすごいツールだと思います。それ故、だからこそその扱いには十分すぎるほどの慎重さが求められるのだと痛感しております。
考えれば、大した理由もなく唐突にこの日記を付け始めたのが2年とちょっと前。当初は適当なところでさっさと閉じるつもりでしたが、知らず知らずのうちに瞬く間にいろんな人々に知られるようになり、「これはすごい、面白い」と、名前も知らない会ったこともない多くの人々から、個人的に感想を頂くようになりました。それが次第に面白くなり、やがてこの日記を付けることが自分にとっても日々のささやかな楽しみの一つになりました。

この日記への一日のアクセス数を見ると、だいたい平均して150件前後と、決して余所様のブログと比べて多いわけではありませんが、その中には本当にいろんな身分・職業の方々がおられるようです。授業の教材として写真を使ってくださっている小学校の先生、ご家族の介護の合間の楽しみとして見ておられる人、はてはまったく別分野の研究をなさっている、まったく面識のない大学教授の方までご覧になられていると、つい最近になって知りました。そんな風に、私の活躍を陰ながらも応援してくださっていた方のうちの一人を辱めてしまった、自分の言葉の軽さをいくら呪っても足りない思いです。

その性質上、様々な理由でこの日記を好かない人々は一定の割合以上でかならず存在すると思います。しかし、それと恐らく同じくらいの割合で、この日記を面白い、ためになったと言ってくださる人々がいるのも事実です。大学で学位を取得した直後に、私の尊敬するとある研究者が、

「これからは人からものを教わるんではない、お前が人にものを教えるのだ。それが研究者の、本当の仕事だ」

と言っていたのを今更のように思い出しました。厚かましいものの考え方かもしれませんが、もしこの日記を続けることにより、いろんな人々が「ためになった」と思ってくださるなら、かの人の言う「研究者の本当の仕事」というものを遂行できているのならば、もう少しこの場所に居続けることに意義はあるのかもしれないと思っています。

しかし、あれほどの事をしでかしながら何食わぬ顔でこの日記を続けたのでは、ご迷惑をお掛けした人々に対して申し訳が立ちません。そこで考えた結果、さしあたり「上の正体不明のノミバエの正体が判明するまで」は、現状を維持しようという結論に達しました。
国民の支援あって生きさせて貰っている立場上、研究者には未知なる新知見を一般に周知させる形で、国民に還元する責務があります。あの未確認生物の正体を暴き、その結果をいずれこの場にて公表し、その時に改めてこの日記が皆様にとって本当に役に立つ場だったのか、本当に残しておくほどの価値があるものなのか、真意を問いたいと思います。

私は頭でっかちなだけで、人間としてはまったくの未熟者です。もしも私が再び暴れ始めたときには、ぜひぶん殴ってでも引き止め、叱り飛ばしていただきたく存じます。ここに訪れる全ての人々が、畸人たる私の育ての親です。何卒、よろしくお願い致します。

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おかえりなさい
復活、ありがとうございます。
私は虫、昆虫を好むタイプではありませんでしたが、Ⅲ月紀さんからいただく情報で、大きくイメージを変えらえました。生物は、生まれた時すでに死の危険を背負っているということ。寄生者とともに生き、天敵に襲われて命を落とすまでの刹那に命をつないでいくものであること。それぞれの利害が織りなす壮大なドラマの中に、人間である自分を位置付けてみると、くらくらします。綺麗に、健康に長生きを望むということは自然界ではほとんどありえないんだ。傷も病気も抱えて命を走り抜けて行くんだなぁ。身の周りにいる「虫、キライ」人間たちにも、そして、教室で出会うたくさんの少年少女たちにも、そんな世界の存在を紹介できたらと思っています。コンパクトに、シャープに、生き物の姿を切り出して私に見せてくださるⅢ月紀さんの活動に感謝しています。
私は新種昆虫の種の同定には大きな興味を寄せるものではありませんが、それが、生き物の多様性を解き明かしていくお仕事なのだという理解をしています。研究者としてはそちらが本業なのでしょうが、私のような利用者の存在も、ぜひ、お許しください。
私にとって、最初の衝撃的な写真は各種「アリタケ」でした。アリに、そんな苦労があるなんて!また、音楽で「とべとべ~トンビ~」と歌う教室には精悍なトンビの顔写真をパウチして飾らせていただいていました。
横山裕子|2013.07.14/08:17
いつもブログの更新、楽しみにしてます。応援してます。がんばってください!
-|2013.07.14/14:11
(´;ω;`)
micromyu|2013.07.14/17:28
(´;ω;`)
micromyu|2013.07.14/17:28
みなさま、ありがとうございます。うまく言葉に表せませんが、とにかく、本当にありがとうございます!
richoo|2013.07.15/21:52
管理人のみ閲覧できます
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-|2013.07.16/00:57
誠にありがとうございます。楽しみにして下さっている人たちのため、私も出来る限りのことをして行きたいと思っております。よろしくお願い致します。
richoo|2013.07.16/06:35
いつも楽しく拝見しています。ノミバエの同定、良い結果が出ると良いですね!楽しみにしてます!
-|2013.07.16/09:57
研究の最前線
研究を自分のもの、研究者だけのものとせず、一般大衆に(それも無償で)公開してくださるのは、本当にありがたいことです。専門家が感じた疑問や驚き、つまり研究の最前線をほぼリアルタイムで見せてもらえるとは、良い時代になりました。勝手ながらこれからも応援させてもらいます。
ただのファン|2013.07.16/10:32
-様
ありがとうございます。この仲間の種同定はかなり難解ですが、何とか判明できるよう努力いたします!

ただのファン様
本当に感謝いたします。そのようにおっしゃって頂けると、私も嬉しいです。仕事柄、新知見は何でもかんでもという訳には参りませんが、可能なかぎり一般の方々へ向けて、いろんな情報を発信いたしたいと思っております。
richoo|2013.07.16/17:58

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