かんかんのう

376.jpgベッコウタマユラアブ(ベッコウクサアブ)Pseudoerinna fuscata。全国的にきわめて希少で、めったに発見されない大珍種の巨大バエ。ほぼ例外なく豊かな森林が残されている場所だけでのみ得られる、「もののけ姫」のコダマみたいな奴。何物にも染まらぬ漆黒の体に、ベッコウ細工のような美しい翅を持つ顕著な種で、少なくとも日本でこれに似たハエアブの類は他に思いつかない。分類学的に見ても、現状では所属があいまいである。

成虫は夏に発生するが、行動生態的な情報はほぼない。成虫の発生時期がとても短いそうで、それが容易に発見できない理由の一つと思われる。たまゆらの名のゆかりだ。
さらに、幼虫がどこでどうやって育つのかが分かっていない。近縁属の生態から察するに、おそらく土壌中か水中で他の虫を捕食している。

375.jpg残念ながら、これは既に死んでいる個体。なので、上の写真は死体の脚をそれらしく整えて葉上に乗せて撮った、いわゆる「らくだ写真」である。偶然、山道の路上でアリがこの死体を引きずっていたのを見つけ、奪い取ったもの。生きたものが周辺にいないか、草の根分けて探したが無駄骨だった。発見場所は、すぐそばに清らかな川が流れている立地。発見時の死体はまだ新鮮で柔らかかった。
なお、「らくだ写真」というのは俺の造語で、「野外で死んでいた生き物の脚を動かしてずらし、生きているような姿にして撮影した死に物写真」のこと。古典落語「らくだ」の中で、死んだ男の体を後ろから羽交い締めにして、手足を動かして踊らせるシーンがあるところからとっている。

動物・植物の別なく、生き物の和名はしばしばセンスに欠けるものが多い。その中で「たまゆら」という美しい言葉を、よりによって一般にはなかなか日の目を見ないハエの仲間に付けた先人の英断をたたえたい。

本州中部にて。間違いなく都道府県レベルで初記録の場所。

なお、本日から海外へ小遠征。

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y形県にて目視経験がありますが、撮影・採集できず(´;ω;`)。
micromyu|2013.08.03/19:30
これが生きている姿、なんとかして見たい・・
richoo|2013.08.11/15:01

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