草不可避

463.jpg今年の夏に見たカヤネズミMicromys minutusの巣。

実家にほど近いとある町の河原に、カヤネズミがまとまって生息している。毎年、帰郷の際にはここを訪れ、ネズミの巣が今年もちゃんと確認できるか調べている。

カヤネズミはとても小さなノネズミの一種で、ススキやアシが茂る草原に生息する。細い草を巧みに加工して、まるで鳥の巣のような独特の丸い巣を作るので有名である。そして、近年こういう生息に適した環境がなくなってきていることを受け、全国的に希少になりつつある動物としても知られる。この生息地のある県とて例外でなく、県の希少野生生物に指定されている。
俺がここ数年間、この生息地である川にそって右岸・左岸ともにひたすら歩いて調べた限りでは、長さ十数kmあるその川の中でも、とある500mほどの範囲の流域にそった草むらでしか巣が見つけられていない。その場所は、河川敷の他の場所に比べて、少し生えている草の種類や生え方が違うように思える。どうやら、ネズミはそのわずかな環境の違いを見抜き、本当に自分にとって営巣に適した箇所にしか生息していないらしい。

カヤネズミは夏期に草上で巣を作って過ごし、冬は地中に隠れて過ごす。夏の草むらは草が生い茂り過ぎ、カヤネズミの巣探しをするには向かない。本来は冬になってから枯れ野でまだ草から落ちずに残っている巣を探す方が効率がいい。でも、せっかく盆で帰郷した時だったので、思い切って夏の草いきれの中へ特攻し、巣を探すことにした。

生息地のコアになるエリアの一部に市の職員による草刈りが入ってしまっており、生息を確認できない状況もあったが、まだ草刈りが入っていない箇所ではいくつか巣が見つかった。しかし、どれもやや古く、すでに使われていない雰囲気だった。俺がここで見る巣はいつもこういう巣ばかりで、未だにご本尊そのものの顔を拝めていない。

462.jpgカヤネズミの巣作りはとても巧みである。一見、鳥の巣のように見えて、作り方も構造もまったくそれとは異なる。ネズミの巣は完全な球形で、出入り口らしい箇所がどこにもない。適当な場所を掻き分けて出入りするのだと思う。そしてその作り方も独特で、鳥と違ってよそから巣材を一切持ってこない。空中で数本の細い草を一カ所により集めて束ね、短冊状に噛みほぐした後に丁寧に編み込む。だから、この丸い巣はほどけばただの草に戻ってしまうのだ。巣が丸ごとボトッと地面に落ちることはない。

461.jpg巣を作ろうとはしたが、途中で気に入らなくなり断念したようなものも見つかった。


460.jpg数年前、多くの巣が見つかった区画。大規模な草刈りが入ってしまっており、丸坊主に。ネズミはどこへ行ったのだろう。


日本のどこかにて。

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