風もないのに
2013/11/29|Category:海外・東南アジア

灯火に飛来した、ミノムシそっくりの蛾。無風でも体を揺らし、これでもかというほどにミノムシ加減を主張していた。
灯火に来たから見つけられるようなもので、自然の状態じゃこれは絶対に発見できないと思う。近くにいたおじちゃんに、「これミノムシそっくりだと思いますよね?」と聞いたら、「思わねぇよカス!」と一蹴された。
こっそり自然の茂みに乗り移らせて「やらせ写真」を撮ろうと画策したが、生暖かい目で「いつやるか?いつ意地汚いやらせをやるか?」と見つめるおじちゃんの視線を背後に感じ、やめた。
同じ人間同士でさえ、同じ物が全然違って見えるのだから、他の生き物にはこれが想像だにつかない別のものに見えているかも知れない。だからこそ擬態の研究は難しいし、面白くもある。
人間の脳は、見たことのない生き物を突然目にしたとき、それがかつて見た別の生き物に著しく似ていると判断すると、すぐ「擬態だ!」と思いこんでしまうように出来ているのだろう。巨大な蛾の一種ヨナクニサンは、前翅の縁の模様が鎌首をもたげたヘビの横顔そっくり。だから、しばしば「ヘビに擬態して身を守っている」なんて言われるが、あれはただの人間側の思いこみのように思う。
「擬態か思いこみか、それが問題だ。」と、個人的にはミノムシ擬態と思いたいこの蛾に諭されたように感じた。
マレーにて。