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通りすがりに遠目でそれを見たとき、最初はヨモギにただの枯葉が引っかかっているものだと思った。しかし、その色と形に覚えがあったので、よくよく近づいて見てみたら、案の定「ヤツ」だった。どんなつまらない小さなことでも、ちゃんと確かめてみるものである。

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エグリヒメカゲロウDrepanopteryx phalaenoidesだった。ヒメカゲロウ科は小型のウスバカゲロウの親戚筋で、いくつもの種類が存在する。その中でもエグリは大型種の部類に入る。各地の雑木林などで見られるが、たまに灯りに飛んでくる程度で生態が分かっていない。数も少なく、都道府県によっては希少種扱い。
褐色の体にえぐれた翅形は、遠目には見事に枯葉に擬態(生き物に対して簡単に擬態という言葉は使うべきではないのだが)しているように見える。静止時は頭を下に隠すから、余計に生き物っぽく見えない。

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8月の頭に見つけたこの個体は、異様に体がすり切れてボロになっている。おそらく、こいつは今年羽化した新成虫ではない。昨年度の夏か秋くらいに成虫になったものが越冬し、そして今の今まで生き長らえたものとしか思えない。
詳細は知らないが、ヒメカゲロウの仲間には夏か秋に成虫になってそのまま越冬し、翌年まで生きるものがいくつか存在するらしい。近所の山では、まだ肌寒い2-3月にエグリが街灯に飛来することがあるため、エグリも成虫越冬であろう。仮にエグリが夏の終わりくらいに新成虫が羽化する種とすれば、俺が見たこの個体はかれこれ1年近くも成虫のまま生き続けていることになる。

1年と言えば、ハツカネズミやアカネズミなど一般的なネズミが生まれてから死ぬまでの期間とほぼ同じだ。それを考えると、こんなちっぽけでクズゴミみたいな羽虫が、小型の哺乳動物の寿命と同じくらい(しかも卵・幼虫期間を入れずに)生きていられるのは、単純にすごいことだと思う。蜉蝣の命ははかないというが、ヒメカゲロウに限っては案外そうでもない。


長野にて。

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