
タカネクロヤマアリ
Formica gagatoides。本州中部の森林限界以上の高標高にしかいない、高山アリ。日本のアリの中には一定の標高より上でしか見られない種がいくつかおり、一部のアリ研究者はまとめて高山アリと呼ぶ。その中でも、タカネクロヤマは真に高山にしかいない種である。
なお、高山蝶とよばれる蝶にしたって、本州では10種をそう呼んでいるが、本当に高山帯にのみ分布が限られるのはタカネヒカゲとミヤマモンキチョウ(タカネキマダラセセリも?)くらいである。

ネット上の「アリ画像データベース」で見ると、少し低標高にいるヤマクロヤマアリ
F.lemaniとどこがどう違うのか、よくわからない。しかし、生息地に行って生きたものを見ると、理屈でなく何となく違うのが分かる。

「アリ画像データベース」には、胸部が赤みを帯びるのが特徴のように書いてある。確かに、胸部に赤みをさした個体は多い。まるで赤いチョッキを着たような雰囲気で、シックな格好良さがある。でも、全身黒い個体も同じくらい多い。

高山植物の上に遊ぶ。本当は遊んでなんかいない。食うものの少なく、気温変化の激しい過酷な環境下で、必死に餌を探し回らねばならない。こいつらがまともに地表で活動できるのは、晴天時のみに限られる。

ハイマツに付くアワフキの死骸を運良く拾った。日が陰る前に、死にものぐるいでダッシュして巣へ急ぐ。高山蝶の舞う高山地帯では、小さきもののドラマが人知れず展開されている。
長野にて。