532.jpg木の肌カマキリLiturgusa sp.に捕まったオオアリCamponotus sp.。この世のどこかの楽園にて。

世界中の熱帯(特に東南アジア、中南米)には樹幹を住処とする、扁平な体で樹皮そっくりな色彩のカマキリが見られる。それらはどこの地域のものも、非常によく似た姿と生態を示しているが、その全てが必ずしも系統的に近縁なもの同士ではないはずである。
一般的に「木の肌カマキリ」と呼ばれるものとしては、東南アジア産のTheopompaが有名どころのように思える。

「木の肌カマキリ」は、どこの地域の種も動きが雷のように素早い。その動きを生かして、すばしっこいアリを好んで捕食する。常に頭を下に向けて樹幹に止まっており、射程までアリが近寄ってくると、初速から最高スピードでダッシュしてアリを追い、あっという間に捕まえる。普通のカマキリは手元に餌が来ないと捕らないし、さほどアリを餌として好まない。だから、カマキリがアリを能動的に追い回す様は、見ていて異様である。

不思議なことに、野外でこの手のカマキリにバッタなどアリ以外のものを差し向けると、捕ろうとしない。あるいは、捕ろうとしても逃げられたり、ちょっと囓ってすぐ捨てたりする。その直後にアリを与えると普通に捕って食うため、先の餌は腹がいっぱいで食えなかったわけではない。
実験的にきちんと調べた人はいないと思うが、世界中の「木の肌カマキリ」と呼ばれるものの中には、アリ捕食に特化したものが相当種数混ざっていると思う。

いつか見てみたいカマキリの一つに、アフリカのSphodromantis obscuraがある。アフリカには、枝の中空のトゲの中に特定種のアリを養う「アリ植物」のアカシアの木がある。件のカマキリは、そのアカシアの枝上にしか住まない。そして、腹部の形がアリの住処であるアカシアのトゲそっくりの形をしているらしく、油断して近寄ってくるアリを次々に捕らえて食うという(Beier and Hocking 1965; Gilbert et al. 1975)。現時点で、好蟻性と呼べそうな唯一のカマキリである。
姿を確認したいのだが、関連論文が極度のマイナー誌のため入手できず、どれほどそれがアカシアのトゲにそっくりな姿なのか分からない。加えて、最近の採集例も聞かず、ネットで画像検索しても出てこない。この種を含む属は種類が多いが、いずれも日本のハラビロカマキリに似た種ばかりの、代わり映えしない分類群のようだ。その中でこの1種だけがそんなに変わった姿をしているとは考えにくいが、でも見てみたい。


参考文献:
Beier M, Hocking B (1965) A new Sphodromantis (Dictyoptera: Mantidae) from Tanganyika, with notes on habits. Proceedings of the Royal Entomological Society of London. Series B, Taxonomy 34:31–32.
Gilbert LE, Raven PH (1975) Coevolution of animals and plants. The University of Texas, Austin.

トラックバック

http://sangetuki.blog.fc2.com/tb.php/892-dc53cbb7

パラディゾparadiso、囲われた場所の謂いであるならば、
こんな悪魔の饗宴もあるのですね、
至福の場所、この世の楽園は何処にあるのか・・
それにしても綺麗な鼈甲仕様の木の肌カマキリ♪
狩った獲物を誇るエイリアンの様です。
瓜豆|2013.10.24/16:01
捕まったアリの悲鳴が聞こえてきそうです。東南アジアの木の肌カマキリは、もっと凶悪な目つきをしていて、顔を大写しするととても恐ろしげです。
中南米と東南アジアの木の肌カマキリは、間違いなく遠縁関係のはずですが、それにも関わらず瓜二つな姿に進化したのは、全く自然の妙ですね。
richoo|2013.10.24/16:58

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する