2013/11/13|Category:海外・東南アジア

雲霧林のセミ。ヒグラシに近い雰囲気で、形はあまり変わっていないが模様はコケそっくり。苔むした樹幹に止まると、体の輪郭がはっきりしなくなってしまう。鳴き声は日本のヒグラシ同様、至近で聞くと耳障りでやかましい。
幼い頃読んだ子供向けのセミに関する本に、「日本のセミは、外国のセミ研究者の間では小鳥のように美しい声で鳴くセミとして人気が高い」と書いてあったのを覚えている。それを見た当時、外国のセミの研究者は総じて耳がおかしいのかと思っていたが、実際に外国のセミの声を聞く立場になって、その意味が分かった。
外国のセミは、ほとんどの種類がチーとかジーとか単調でつまらない声で鳴く種類ばかり。ミンミンとかシャーシャーとかツクツクボーシとか、個性的な声の種類が非常に少ない。ジーと鳴くアブラゼミでさえ、ちゃんと前奏と間奏があって音楽性がある。日本という国は、世界的にも稀な音楽家のセミ達が住まう国だったのだ。
なお、熱帯諸国ではセミの声は雑音として聞き流されており、セミの声に耳を傾けて感慨にふける現地人に出会った試しがない。そういう感性を持っていることは、日本人が世界に誇れる数少ない美徳の一つだと思う。
マレーにて。