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セクロピアCecropia sp.の幼木。インドネシアにて。

本来は中南米に生育する植物だが、様々な理由でアジアにも人為移入しており、勢力を伸ばしている。荒れ地でもよく育ち、繁殖力旺盛なため、侵略的外来種として懸念されている。インドネシアにおいては、スマトラ島ではぜんぜん見なかったが、ジャワ島では市街地を中心に、そこらにボンボン生えていた。高さ数メートルの大木に育ったものも珍しくなかった。

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セクロピアは竹のように中空の幹を持ち、ここへアリを住まわせる「アリ植物」として著名である。原産地では大抵アステカアリAztecaという新大陸特有のアリ類が住み着くが、かなり浮気性な植物のため他にもいろんな分類群のアリと関係を持つ。また、相当に特殊化したアリ植物であるにもかかわらず、アリが居なくても十分育つ能力がある。アステカアリの分布しないアジアでも育つことが出来る所以だ。

セクロピアは葉柄の付け根から栄養体という、タンパクや脂肪を含む粒子を多数分泌して、アリに餌として与える。それを貰う代わりに、アリは植物を食い荒らしに来る害虫を撃退する傭兵として働く。

浮気性の植物だから、アジアに持ち込まれたセクロピアはアジアのアリと手を組むのかと思っていた。しかし、少なくともジャワ島で何株ものセクロピアを見た限り、いずれも現地のアリが住み着いている様子はなかった。そもそも、アリに登られている様子がなかった。栄養体は誰にも利用されないまま多量に実っており、低い部位に実った古いものはそのまましなびるか腐っていた。

同じような観察例は、すでにシンガポールでもなされていた(Lok et al.2010)。こちらは時々現地のアリに登られるようだが、やはり栄養体は利用されていないらしい。セクロピアは幹内は中空だが、出入り口がどこにもない。だから、原産地でこれに住むアリは、自力でその茎に穴を空けて出入り口を作る能力を持つ。一方、アジアのアリどもの中でそんな高尚な技能を覚えたものはまだ現れておらず、この植物はアリどもからは「居住できる空間」とは認識されていないのである。

今日もアジアのセクロピアは、居もしない共生アリのために栄養体を作り続けている。


参考文献:
Lok et al.(2010) The distribution and ecology of Cecropia species (Urticaceae) In Singapore. Nature in Singapore 2010 3:199-209.

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