682.jpgオオミスジNeptis aiwinaの越冬幼虫。梅の木につく蝶の仲間。長野にて。

683.jpgこの蝶の越冬態は小さな若齢幼虫であるうえ、全身がゴツゴツしていて梅の樹皮と紛らわしい。しかも、越冬巣のような分かりやすい目印を一切作らず、ただ適当に幹にへばりついているだけ。仕上げに、取り付く樹幹の部位はまったく決まっていない。だから、日本の蝶類の越冬態の中でもかなり発見が難しい部類に入る。
でも、何度も探し続けているうちに、何となく「いそうな場所」というのがぼんやりとイメージ出来るようになる。うまく言葉で表せないのだが、雰囲気でここだというのが分かるのである。そして、そこを見ると実際に首尾良く見つけられることが多い。

681.jpg絶対に発見不可能だと思うのでネタバレすると、写真中央の緑の枝の付け根真下にある、裂け目の間に挟まっている。

普通こういう発見困難な蝶の越冬態は、夏の間に成虫の姿を見かけていて、確実にいることが分かっている場所で探さないと、探す途中で心が折れてしまう。でも、「イメージ」が出来るようになれば、初めて行く場所でも比較的簡単に見つけられるようになるものである。ここに載せた2個体も、ともにこの初見の木で探し始めて30秒以内にあっさり見つけた奴らだ。

こんなふうに発見が難しいオオミスジだが、正直なところ擬態昆虫としてはまったくの小兵レベルとしか言いようがない。何しろ食樹が梅と分かっているのだから、梅の木をひたすら探せばいつかは必ず見つけられる点で、発見難易度は甘納豆に蜂蜜とガムシロを投入して流し込むほどに大甘口である。
これが熱帯のジャングルとなると、そこに住むたいがいの擬態昆虫は食草が分かっていない。そして、擬態の精度そのものも日本の有象無象に比べれば段違いに高いとくる。現地でそういう虫を採って売っている人ならいざ知らず、余所の国から来た者がちょろっと短期で来て自然の中から見つけ出すなど、ほぼ不可能に近い。


中南米の雲霧林に、スメルダレアSmerdaleaという生物がいる。体長1cm前後のこの生物は、全身が甲冑のようなゴツゴツした甲羅に覆われており、緑を主体としたゴチャゴチャした模様をしている。その姿で、苔むした木の枝に止まって過ごしているらしく、ぱっと見ただけでは苔とまったく区別できない。そのため、この甲獣を野外で、なおかつ自然状態でいるさまを見た者は、これまでほとんど存在しない。
この甲獣を見るためには苔むした枝をひたすら見て探せばいいのだが、雲霧林ではすべての木が根元から枝先まで苔むしているため、探す的がまったく絞れない。広大な雲霧林でこれを探すということは、広大な砂浜から誰かが落としたたった一粒の色つきの星砂を探し出すに等しい苦行である。

かつて南米の山中に野宿した際、夜間灯火にたまたまその甲獣が1匹だけ飛来した。すぐ近くに甲獣の生息場所があるに違いないと思い、翌日に丸一日かけて付近の苔むした枝という枝を片っ端から見回った。しかし、激しい眼精疲労を患うだけの結果に終わった。きっと甲獣は俺が死にものぐるいで、まるでトンチンカンな場所ばかり探している様をどこかから見下ろし、腹を抱えて高笑いしていたに違いない。

いつか再びかの地を訪れ、あの忌々しい甲獣を平らげたい。そのためには、日本のオオミスジ程度の小兵など瞬時に発見できる程度の眼力を身につけねば、まったく話にならないのである。

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近いところにカイガラムシついてませんか?コレ
介殻蟲屋|2014.02.20/09:58
ついてますついてます!
-|2014.02.20/15:31

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