2013/12/21|Category:蜻蛉

水田脇の林の下枝にしがみつき、そのまま風雪に耐えながら一冬越す。見た目も色も小枝そっくりなのに加えて、そういう小枝が密生した場所に止まることが多いため、発見の難易度がすさまじく高い。探す目印は一切なく、しがみつく場所も決まっていないので、探すポイントを絞るのに一苦労する。
活動期の本種に近寄ろうとすると、すぐに飛んで逃げてしまう。しかし冬眠中は、当然ながらその場から一歩も動かない。とはいっても、しがみついた体勢で体を傾ける程度のことはできる。人間の接近を察知すると、このトンボは体を巧みに斜めにして、人間の側から見てトンボの形と認識されにくいように自身の姿を見せる。だから、ただでさえ見つけにくいのに余計に見つけにくい状態になる。

この中で3秒以内に発見できたら神。
行きつけの森でここ数年間、毎年このトンボの越冬態を探し続けて分かったのは、こいつを確実に見つけるには北向きの斜面に発達した杉林がいいらしいということ。日も当たらず底冷えするこの杉林で半日くらい探すと、毎年必ず1匹は見つかる区画があるのだ。
このトンボにしろゼフィルスの卵にしろ、とりあえず越冬昆虫を探したくば北向きの斜面を探すと外れがない。越冬昆虫にとって、一日の中で極端に気温が上下する状態は危険である。冬眠も活動もできず、無駄にエネルギーを消耗して衰弱死してしまうからだ。だから、一日を通してずっと気温が低いままの北向きの斜面が、安心して冬眠できるのである。
長野にて。