1251.jpgタイワンウチワヤンマIctinogomphus pertinax。福岡にて。

オニヤンマよりずっと小さいのに、オニヤンマよりずっと強靱な体格に見える。必ず枝先に体を水平にし、中脚と後脚だけで枝を掴んで止まる。
性格はすさまじく凶暴で、自分の体格にそぐわぬ大柄の飛翔生物を空中で捕らえる。他のトンボはもちろん、スズメバチさえ捕らえて、頭からバリバリ食い散らかす。

シャッターを切る瞬間、こちらをギロリと睨んで消えた。しばらく待つと、上空から何か他の生物の破片をバラバラ落としながら急降下してきて、またもとの枝に止まった。

1097.jpgベニイトトンボCeriagrion nipponicum。福岡にて。

環境省の絶滅危惧種。すごく美しくて、しばしば口半開きで見つめてしまった。近所の水溜めの周りにいるのだが、日によっていたりいなかったりする。移動性が強いらしいので、生息拠点になりそうな水場を求めて常時広範囲を飛び回っているものと思われる。
しかし、ここの水場には怖気がするほど多量のカダヤシがいるので、産卵してもまず育たない。ただでさえ生き物の住める水場の少ない都市部のこと。いっそカダヤシをすべて殲滅してしまえば、この水場は小型水生昆虫にとっての駆け込み寺として機能すると思う。

1098.jpgしかし、この水溜のある土地は2,3年以内に買収され、更地になるようである。

1150.jpgキイトトンボCeriagrion melanurum。湿原様の水場に見られる。割と生息条件がうるさく、池や田んぼさえあればどこでもいる雰囲気ではない。

全身朱べた塗りのベニイトトンボもいいが、緑と黄色と黒の塗り分けなキイトトンボも美しい。

広島にて。

1012.jpgベニイトトンボCeriagrion nipponicum。福岡にて。

思わぬ場所で見つけた。近隣にいくつか生息地がとびとびあるので、そこから流れてきたらしい。どうせ最近やたら増えている近縁のド普通種リュウキュウベニC. auranticumとも思ったが、たぶんオリジナルのほうで間違いない。

環境省の絶滅危惧種。しかし、本来は生命力が強く、移動能力にも長けた種類らしい。最近、少しずつ勢力を巻き返しつつあるようで、レッドリストの掲載ランクもかつてよりは下がった。

903.jpgベッコウトンボLibellula angelina。九州の保護区にて。

世界でもアジアの東端にしか存在しない、絶滅寸前の昆虫(環境省の絶滅危惧ⅠA類、2012年時点)。日本では国内希少野生動植物に指定されており、勝手に採ると最大一億円の罰金が科せられる。
居住区から遠くない場所に、比較的多く発生する保護区があるため、どうしても一目見たくてある日に行った。ギフチョウにしろベッコウトンボにしろ、人の注目を浴びてちやほやされている希少動物のことを日々ディスるためには、それらの美しさ・愛らしさをよく理解しておかねばならない。
恥ずかしながら、日本でベッコウトンボが見られる場所は、静岡の桶ヶ谷沼ただ一カ所しかないと思っていた。九州にもいるとは、まったく知らなかった。


904.jpg行った時期はすでに発生の最盛期を過ぎかけており、ほとんどの個体は成熟して真っ黒いやつばかりだった。羽化してしばらくは、名前の通り透き通るような黄色をしており、ベッコウ細工のようで美しいのだが。来年はもっと早い時期に行きたい。
春から初夏にかけての2か月ほどが成虫の活動期。肌寒い日もあることを想定してか、トンボとしてはやけに毛深い。

906.jpg決して煌びやかではないが、日本らしい控えめな美しさがある。大抵の昆虫図鑑には、成熟しきった真っ黒い個体の絵なり写真なりが載るため、長い間「ベッコウトンボってどこがベッコウなんだ?」と不思議に思っていた。


907.jpg警戒心は強く、近寄りがたい。こういう生き物の撮影にはいつもマクロレンズを使っているため、かなり近寄る必要がある。一緒に同行した保護区の人曰く、最近ここでトンボを撮る人はみな望遠レンズを使うらしい。ギリギリ手前まで寄ろうとする人は久々に見たと。
生息地を踏み荒らさずに済むという点では、望遠レンズのほうがはるかにいいとは思う。しかし、許される限り俺は相手に至近まで自分が近寄り、直に見つめ合いたいのである。

905.jpgやはり、トンボチョウ大形甲虫というのは、「華」がある。既にスタート地点で、メクラチビゴミムシやらドウシグモやらのはるか前方にいる。そこに希少という色眼鏡までついてしまえば、もはや地味小虫どものかなう相手ではない。少しくやしい気分で帰った。