双想ノ唄ネオトロピクス・サード

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マルセグンタイアリLabidus praedatorLabidusの仲間は半地下性のグンタイアリ。地下を行進し、餌を狩るときに地表に現れるようだ。夜間に姿を見せる傾向があるように思う。動物植物関係なく、かなりいろんなものを食う。しかし、比較的小型なのと地上にそんなに出てこないのとで、あまり危険視されない。大型のグンタイアリでさえ、地元の人間はそんなに恐れないが。
地上を行進するときは、行列の両脇を護衛役が固める。ペルーにて。

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このグループは、グンタイアリというより東南アジアのヨコヅナアリPheidologetonに見た目が似ている。食性も同じ。しかし、ものすごく走るスピードが速く、なかなか動きを止めて撮影できない。さらに悪いことに、これに共生する腰巾着どもは、それに輪をかけてさらに高速。ペルーにて。

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行列上をホバリングするノミバエ。地上すれすれを飛び、アリを直接攻撃する。頭を狙っているように見えるが、早すぎてよく分からない。一瞬体当たりされたアリはその場で身をよじって悶絶するので、これの攻撃を受けるのはアリにとって相当苦痛に違いない。これが集結し始めると、アリはものすごく怒り狂いはじめ、行列の両脇ガードがすさまじくなる。ペルーにて。

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行列中を超音速で瞬間移動するアリシミ。アリに比べてかなり大型。その身が妖しく放つ幻光は何のため。ペルーにて。

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アリ型のハネカクシ。たぶんMimeciton sp.?。かなりスピードが早い。この手のアリ型ハネカクシには珍しく、色彩はアリに似ていない。夜間アリと一緒に出てくることが多いから、アリ鳥の攻撃を気にしなくていいからなのか、元々かなり小型種なのでアリ鳥に狙われること自体がないからなのか。ペルーにて。

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シリホソハネカクシ一種Vatesus sp.。Ecitonの行列に見られる種の三分の一程度の小型種。絶望的に動きが素早い。沢山のアリ達の間を軽々と追い越していく。ペルーにて。

双想ノ唄ネオトロピクス・セカンド

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ヒメグンタイアリNeivamyrmex sp.。他種のアリを専門に狩る小型のグンタイアリ。東南アジアのヒメサスライアリAenictusに生態も見た目も瓜二つだが、こいつは小さい目があるので区別できる。新大陸のみに分布するが種数はすさまじく、分類も進まないため、未だ何種類いるか正確には分からない。そして、そのそれぞれの種には恐らく最低一種類、その種にだけ専門に寄生する好蟻性昆虫がいる(と俺は信じて疑わない)。残念ながら、今回これに寄生する生物は殆ど撮影できていない。ペルーにて。

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ヒメグンタイアリの行列にいた奇妙なノミバエ。赤塚不二夫の漫画に出てくるケムンパスを彷彿とさせる。翅はない。撮影しようと思って撮影したわけでなく、アリを撮影したら偶然写り込んでいただけ。グンタイアリの行列をランダムに撮影して後でよく見ると、思いもしなかったような生物が亡霊のごとく写り込んでいるのにしばしば気付く。ペルーにて。

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ヒメグンタイアリの後脚に取り付いた微少甲虫、ムクゲキノコParalimulodes sp.。この甲虫の仲間には名前の通りキノコに集まるグループもいるが、ある系統は好蟻性に特化した。そして、その好蟻性のグループは殆ど全てが新大陸とオーストラリアにしかいないらしい。アリの巣どころか、アリそのものに住み着くという大した居候。体表面の油を舐めているという、妖怪アカナメみたいな奴。
4ミリそこそこの、小さい上に高速で走り回るアリの体表にこびりつくさらに小さな甲虫を、野外で探し出すのは殆ど不可能に近い。なので、とりあえずひたすら行列脇でカメラをセットし、通過する数千匹のアリを一匹一匹撮影してあとで写真を見て探すしかない。ペルーにて。

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行列上をホバリングするノミバエ。生きたアリに直接攻撃し、卵を産み付ける捕食寄生者。残念ながら寄生の瞬間を撮影できなかったが、同行者曰く、アリの肛門に取り付いて産卵するらしい。ペルーにて。

グンタイアリはしばしば無敵の軍団のように、ネット界隈で紹介される。確かに、コロニーそのものを壊滅させることができる生物など、事実上存在しないと思う(あえて言うなら人間か。生息地の森が破壊されれば、毎日多量の餌動物を要求するグンタイアリのコロニーは生きていけない)。しかし、個々のアリを攻撃し、直接食い殺したり内側から蝕んでいくことに特殊化した天敵は、ハネカクシやノミバエなど、ちゃんと存在する。

一昔前、今は亡きテレビの某動物番組で、動物に関する視聴者からの質問コーナーが設けられていた。その中の質問「グンタイアリに天敵はいるか?」に対して、偶然グンタイアリの行列脇にあったアリジゴクにアリが捕らえられた映像を流して、「グンタイアリの天敵はアリジゴクだった!ズバッと解決!」と結論づけていたのを見て、飯を吹いたのはいい思い出。比較的影響力のある番組だったようで、今でもネット界隈を見ると「グンタイアリの天敵はアリジゴク」などの記述が散見される。今はどうか知らんがウィキペディアにさえそう書いてあった時期があった。もう少しまともな文献でリサーチしようよ。

双想ノ唄ネオトロピクス

今回のペルー調査では、俺は殆どツノゼミばかり探していた。そのせいで、本職の好蟻性昆虫の探索が恐ろしくおろそかになってしまった。同行者ばかりがビギナーズラックでそれらを発見しまくり、俺はタッチ一秒の差でそれを見られず出し抜かれることばかりだった。「くやしいのうwwwくやしいのうwww」状態である。
なので、以前調査に行ったエクアドルの写真もまぜこぜに出すことにした。俺が写真家として大成するかどうかも分からぬ中、これらをハードディスクの肥やしにし続けることに意義を見出せないからだ。
今回の好蟻性関連の写真は、こっちの方が遙かに充実している。まさに好蟻性生物写真家の名折れだ。
http://blog.livedoor.jp/antroom/

コウチュウ・ハネカクシ一種

コウチュウ・ハネカクシ一種
バーチェルグンタイアリの行列脇にうろうろしているハネカクシTetradonia sp.。ちっこいくせにものすごく力強く、凶暴。死臭をかぎつけることに長けているようで、傷ついたアリをめざとく見つけ出す。そして、獲物の触角や脚にかじりつくとズルズル引きずり、他のアリが邪魔しにこないように行列から離す。その後暗がりにアリを連れ込んで、首を掻き切って殺す。ピラニアのように数匹の集団で、徒党を組んでアリにリンチを加える事も多い。しかし、ひとたび獲物を倒したあとは、仲間内でみにくくそれを奪い合う。エクアドルにて。

ダニ・ダニ一種2、4
バーチェルグンタイアリの兵隊アリの大顎にくっついたダニ一種Circocylliba sp.。特殊な分類群のものだが、大雑把にはイトダニの類らしい。このアリの兵隊のこの部分に好んで付く。兵隊は顎が巨大すぎて自分で身なりを整えられないため、小型働き蟻にやらせる。目が見えない彼らは、においと手触りで仲間の体表に付いた異物を除こうとする。そのため、この兵隊の大顎の内側に細かい毛が生えているのに合わせて、ダニは背中に毛を生やしている。エクアドルにて。

ハエ・ノミバエ一種2、6(Ec
バーチェルグンタイアリの行列にいたノミバエPhoridae spp.。翅が退化している。すごいスピードで移動する。似た姿の複数種が同居しているようだ。この手のハエは、ゴミあさりかアリの幼虫に寄生しようとしているのだろう。エクアドルにて。

シミ・アリシミ一種1、6(E
ハマタグンタイアリの行列を行くアリシミの仲間Trichatelura manni。アリと共生するシミとしてはかなり大型。高速でアリの傍らを走り去っていく。エクアドルにて。

コウチュウ・アリヅカエンマ

コウチュウ・アリヅカエンマ
ハマタグンタイアリの行列を行くアリヅカエンマムシEuxenister sp.。アリヅカエンマムシの仲間は世界中にいるが、殆どが新大陸にいる。そして、その殆どがグンタイアリと関係しているらしい。クモのような長い脚で素早く走る。エクアドルにて。

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バーチェルグンタイアリの捕食行列の脇でじっとそれを見つめるノミバエ。最初何を目的に行列を見ているのか分からなかった。ペルーにて。

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このノミバエは、白い色をした他種のアリの蛹や幼虫を狩って運ぶアリが来たときだけ飛び立つ。そして素早くその運ぶ獲物に止まり、数秒一緒に運ばれた後にまた飛び立ち、傍らに舞い降りるという行動を繰り返した。恐らく獲物に産卵することで獲物と一緒にアリに卵を運ばせ、巣内の餌を盗むなどするのかもしれない。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行くアリヅカエンマムシ一種。分類群不明。1コロニー内に生息するエンマムシの個体数はとても少ない。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行くシリホソハネカクシ一種Vatesus sp.。雫型の大型ハネカクシ。あまり化学的に防御していない居候らしく、ときどきアリにこづかれる。しかし、ツルッツルの木魚頭とつかみ所のない体型により、アリの攻撃は彼らにとって脅威たり得ない。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行く大型ハネカクシ。たぶんTermitoquediusの一種か。極めて大型の居候。頭の幅の広さからみて、顎がかなり頑丈であろうと予想される。つまり、巣内で大型の生きたアリを襲っている捕食者である可能性を示唆させる。しかし、アリの行列の中にアリとは姿形も大きさも違う生き物が平然といる様は、いつ見ても異様だ。ペルーにて。

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バーチェルグンタイアリの行列を行くアリに似たハネカクシ。たぶんEcitomorphaの一種。アリに似た姿と肌の質感で、周囲の目の見えないアリどもを偽る。サイズの大きめの個体と小さめの個体とがいて、形態も少し違う。別種だろうか。ペルーにて。

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このハネカクシのすごいのは、形だけでなく色彩もアリそっくりなこと。目の見えないアリをだますのに色彩は関係ないと思うのだが、これはアリでなく鳥をだますためだという説がある。グンタイアリの行列周辺には、彼らの進軍に驚いて逃げ出す虫をついばむ「アリ鳥」という連中がうろつく場合がある。いわば混乱に乗じてアリの獲物を奪い取る火事場ドロ。アリ鳥はアリそのものは食いたがらない。視覚でアリとそれ以外の虫を見分ける鳥に食われないためには、姿形だけでなく色も似せないといけないというわけだ。ペルーにて。

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行列を歩くだけでなく、小型の個体はアリの運ぶ荷物に取り付き、運んでもらうこともある。ペルーにて。

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オイアリヤドリバエ(仮名)Calodexia sp.。グンタイアリの行列脇でよく見つかる彼らは、しかしアリに直接の用はない。本来ゴキブリの寄生蝿である彼らは、グンタイアリに追い立てられて地中から逃げ出すゴキブリを攻撃する火事場ドロである。大型のゴキブリはたいてい夜行性で、昼間は落ち葉の下やらに隠れているが、このハエは恐らく日中しか活動しない。非力な彼らにとって、夜行性のゴキブリを自力で探し出すよりはアリの力を借りた方が遙かに楽なのだろう。
しかし、せっかくそうやって寄生しても、その後ほとんどのゴキブリがアリに捕らわれ、ハエの卵ごと食われるであろうことを考えれば、この戦略がどれほど効率的かは大いに議論の余地がある。ペルーにて。

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ハラボソメバエStylogaster sp.。火事場ドロ二号。上のヤドリバエと同じ事をするが、こいつらは同類であるそのヤドリバエにすら攻撃を仕掛ける。また、上のヤドリバエと違ってアリの捕食行軍の先頭にしかいない。華麗に宙を舞い、地上の惨劇を眼下に見下ろす。地面には降りない。
余談。俺は数あるグンタイアリの腰巾着どものなかでも、特にこいつを撮影したかった。しかし、十日近くの調査日の中でこいつに会ったのはたった一度。しかも、公共交通機関を使わねば行けない山奥。帰りの便がくる数分前に見つけてしまったため、ろくな写真も撮れぬうちに帰らねばならなかった。もう行けない場所かも知れないのに。ペルーにて。

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グンタイアリの巣に居候するハエヤドリクロバチ一種Mimopria sp.。ハエヤドリクロバチ科はとても種数の多い寄生蜂の一群で、なぜかかなりの種類がアリやシロアリの巣に居候することで知られる。中にはその居候生活にかなり特化した種も知られ、これもその一つだろう。最初は翅をもち飛び回るが、グンタイアリの行列を見つけるとそこへ飛び込み、翅を落として同居生活に入る。翅を落とした姿はアリそのもので、アリと一緒に行列を走るという。残念ながらその様を俺だけは観察できなかったが、偶然現地で「変わった翅アリ」程度に撮影したものが、どうやら翅を落とす前のそいつらしいことに後で気付いた。彼らがアリの巣にいる理由は、アリそのものに寄生するためとも、アリの巣にわくハエに寄生するためとも言われる。ペルーにて。