2618.jpgスズムシHomoeogryllus japonicus。山口にて。

西日本では割と普通だが、東日本から殆ど出たことがなかった身としては、その辺にスズムシやマツムシが沢山いるという状況は大層希有に思える。特にスズムシなど、幼い頃から出店で売られているか近所の家で飼われているものしか見たことがなかったため、本当にこれが日本において野生でも生存している生物なのか本気で疑った時期さえあった。

ある草原を夜中歩いていたら、沢山の個体が地面に出てきていた。そして、彼らは道端に落ちているキツネやタヌキの糞に集まり、一心不乱にそれを暴食しているのだった。万葉の和歌にも詠われた美声のスズムシは、一方で下手物喰いを平気でする昆虫なのだ。
もっともスズムシは雑食なので、ウンコを食い散らかすのは別に不思議でも何でもない。飼育する際にも、ナスやキュウリのみならずちゃんと煮干しやカツブシを喰わせないと、仲間内で共食いしてしまう。動物のウンコはタンパク質を豊富に含むため、彼らにとっては重要な餌の一つだ。

俺が今まで生きてきた中で見てきたスズムシの姿は、ほとんど全てが人間の家の中でケージに飼われていた姿だった。小綺麗にセットされたケージ内で、小綺麗な野菜を食いながら美声で鳴く、人間に媚びたような姿ばかりだった。そのスズムシが、人目も憚らず野生をむき出しにして、吐き気を催す腐臭・死臭を放つウンコを食い荒らしている様をみて、ああ、これはまさしく野生の生物だったんだなと思い、妙に嬉しくなったのである。

2627.jpgヒロバネヒナバッタStenobothrus fumatus。大阪にて。

少し山手に入らないと見ない。オスは後脚内側を翅にこすりつけ、シュルルルルーー・・と言う。ヒナバッタ類は皆鳴くが、種により多少鳴き方が違う。この仲間も長野じゃクソほど見たが、今ではすっかり遠い存在になってしまった。

2506.jpgエサキクチキゴキブリSalganea esakii

2507.jpg湿潤な森林地帯に生息し、太い倒木内に穿孔して腐朽材を餌に生きている。オスとメスがペアで同居し、幼虫が生まれると寿命の限り一緒に住むようである。成虫は赤みを帯びた黒だが、幼虫は黄色っぽい。よく似たオオゴキブリの場合、幼虫は黒い。

環境省の絶滅危惧種だった種。九州の山間部で局所的に見つかっているだけだったため、珍しいものと見なされていた。その後、さらなる産地が相次いで発見され、またそれぞれの産地内では必ずしも少なくないことが分かり、最新版のレッドからは降ろされた。順当な降ろされ方をした種といえる。とはいえ、九州中どこでもかしこでも探せば見つかる類のものではなく、それなりにいい環境の場所でしか見られない。初めてレッドに掲載されてから降ろされるまでに、相応の時間がかかっている。

この種の模式産地は九州のある山で、そこでは60-70年前にいくつかの個体が得られて以後、生息記録が長きにわたり途絶えていた。2000年になってから、またぽつぽつ見つかるようになり、今ではちょっと探せば結構普通に採れるような種になった。古の昆虫学者がさんざ調査に入っている場所なので、いれば発見されるだろうし、いなければ発見されないはずである。
なので、今になってこの種が簡単に見つけられるようになったのは、今になって急激に数が増えたせいとしか思えないのだが、なぜ急に増えたのかは謎。

福岡にて。

2408.jpgハネナシコオロギGoniogryllus sexspinosus。福岡にて。

西日本で見られる小型種。翅がそぎ落としたようになく、飛ぶことも鳴くこともできない。移動能力に乏しいため、局所的に多産して他では一匹も見かけない向きが顕著。鬱蒼とした森林地帯の地面におり、石の下に小さな部屋を作ってそこにいることが多い。
翅はないものの、一切の発音行為をしないかは検討の余地がある。体をモノに打ち付ける等して、絶対に仲間同士で交信していると思っているのだが。

本日より、魔境に突入。向こうで睡魔リリエールとか睡魔サッキュバスとかに魅了されなければ、3週間弱で現世に戻る模様。

2348.jpgイリオモテモリバッタTraulia ornata。八重山にて。

派手な色彩。毒があるんではなかろうか。